第32回 高周波・アナログ半導体技術セミナー報告 |
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□テーマ:「ミリ波近距離通信技術の現状と将来」 □日 時: 平成25年 7月 24日(水) 14:00-17:00 □場 所: メルパルク京都 4階 研修室5 今回のテーマは「ミリ波近距離通信技術の現状と将来」で、この分野で活躍されている3名の方々を講師にお招きして、貴重な講演をして戴いた。約30名の参加があり、またセミナー終了後の交流会にも多くの方々が参加され、講師を囲んで、熱心な意見交換が行われた。参加者同士の連携促進のきっかけを生み出す場となった。 以下、講演の概要を報告する。ミリ波を使用した高速通信技術は実用化の時期に入り、今後ますます情報ネットワークの中で重要な役割を果たしていくと思われる。 |
◆講演:「近傍界ダウンロードシステムと中距離無線装置によるミリ波ギガビットネットワークの構築」 安藤 真 氏(東京工業大学大学院 理工学研究科 電気電子工学専攻 教授) |
クラウドコンピューティング、大容量ファイルが一般的になってきた今日、比較的近距離での大容量通信それも利便性・機動性に優れた無線通信技術が求められている。ミリ波は1Gbps以上の高速伝送を可能にし、また欠点と思われてきた直進性も逆に利点としていかせることも明らかになってきている。 東京工業大学、日本無線、ソニー、アムスクによる開発チームでの成果は60GHz帯の近傍界ダウンロードシステム(3Gbps)
と38GHz帯 1Gbps屋外アクセス無線システムで、それらに使用されるアンテナ、ミリ波IC、ADC、DACなど要素部品の開発も行われた。これまでミリ波を使った高速通信は開発まで、長い期間がかかったが、やっと実用化の時期になったことが感じられた。将来は60GHzを使ったアクセスゲートを利用することにより大容量のデータを瞬時にダウンロードできるようになる。38GHzの1GHz屋外システムのシステム実証試験もなされ、40GHz中距離伝送システムにむかっている。また、従来ミリ波は降雨に弱いといわれてきたが、東京工業大学構内でこの無線システムを使って降雨センシングによる経路制御等の実験も行われ、実際には非常に短いダウンタイムで運用することが可能という見通しを得た。 |
◆講演:「ミリ波帯ワイヤレスアクセスネットワークに於ける大容量無線バックホール」 谷口 徹 氏(日本無線 株式会社 研究所 部長) |
38GHz帯を使用し、260MHz帯域で1Gbpsを1km以上の伝送距離を年間不稼動率53分(0.01%)以下を実現するため新技術を開発し、システム実証試験を行い良好な結果を得ることができた。この装置は超小型、軽量構造として施工性を改善、高密度局にも対応ができる。 通常TDDでは送受でアンテナを共用するが、今回はスイッチのロスを避けるため、送受別々のアンテナを同一偏波で並列配置させている。送信用高出力増幅器(〜2W)は従来のGaAs MMICからGaN MMICにすることにより、消費電力を20Wから15Wに下げることができた。受信用低雑音増幅器はInP MMICで3dB以下の雑音指数を達成した。またアップコンバータ、ダウンコンバータは3次元MMIC(GaAsHEMT)で小型・高性能化に成功した。I/QモデムICは SiGeバイポーラ技術でつくられた。 また周波数利用効率が2倍になるDDD(Directional Division Duplex)の方式も検討され次の目標として40GHz帯のシステム開発をめざしている。 |
◆講演:「ワイヤレス高速ファイル伝送ミリ波トランシーバーの開発」 清水 潤三 氏(シリコンライブラリ 株式会社 代表取締役) |
シリコンライブラリ社では60GHz帯の3バンドを使ったASK変調方式による高速(〜1.5Gbps)の近接通信用無線モジュールを開発した。(MachPort)従来(4.5GHz帯使用)のものに比べ、伝送速度が4倍と早くなっている。ビデオカメラとパソコンをつなぐときなどには瞬時に大容量のデータをダウンロードすることができる。トランシーバLSIは90nm CMOSのプロセスを使用し、ミリ波送受信部、DAC,I2Cなどを1チップに構成し、WLCSPでボードに組み込まれている。また、ワイヤレス装置の利点を生かすために、無線給電も混載され、より利便性があげることができる。(開発中) |
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