第50回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告 |
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□テーマ:「アナログ技術トレンドセミナ;50回目を記念して」 □日 時: 平成29年12月 5日(火) 14:00~17:00 □場 所: 京都テルサ 西館3階 第2会議室 (京都府民総合交流プラザ) 今回のセミナは、50回目を記念して、アナログ技術に関する世界的な権威である松澤教授(東京工業大学)と、電子デバイス関連市場/技術に関する日本を代表するジャーナリストである泉谷社長(産経タイムズ社)を講師としてお招きし開催した。また合わせてHAB研究会理事長の南部が、日本における技術ベンチャー振興の現状/今後と、HAB研究会のこれまでと今後について講演した。約30名の参加があり、活発な質疑、討論が行われた。またセミナ終了後の交流会でも、講師を囲んで活発な意見交換が行われた。 以下、講演概要を報告する。 |
◆講演:「アナログ回路開発40年を振り返って:技術の変遷と今後」 松澤 昭 氏 (東京工業大学 工学院 電気電子系 教授) |
バイポーラ、Bi-CMOS、CMOS、現在と、各時代に渡って、ADC(ADコンバータ)の最先端技術40年間の変遷を鳥瞰した。その変遷のなかで、超高速化、低消費電力化や高精度化、更には、なめらかな変換を可能にする補間型ADCの発明等で、常に世界をリードする実績を上げ続けることができ、デジタルビデオやDVD等様々な機器の高い商品力を可能にしてきた。最近は、一次捨てられたSAR(逐次比較)ADCが、CMOSの微細化の進展により急速に性能を上げ、超低消費電力化の要請等から主流になっており、今後はSARをベースに他の方式と組み合わせるハイブリット型が、高いSNRを可能にするなど注目されている。 デバイスや微細化に伴う新たな課題の発生や、用途の変化に応じて新たな要求性能が生まれるなど、ADCには依然として強い開発要望があり、継続した研究開発が必要と強調された。 |
◆講演:「IoT革命は電子デバイス急上昇の起爆剤だ!!」 泉谷 渉 氏 (株式会社産業タイムズ社 代表取締役社長) |
IoT世界大革命は、360兆円の新市場創出の姿を明確に描き始めた。様々なセンサや通信モジュール、をインターネットに繋ぐ必要から、データセンターの建設ラッシュが続いており、その莫大な電力需要を緩和するためHDDからSSDへの移行が進んでいる。このため世界で膨大な数のメモリ需要が生まれ、メモリ生産拠点の建設ラッシュが始まっている。また同時にセンサや電力用半導体への需要も急激に広まっている。このため半導体製造設備は、メモリ用のハイエンド生産化ライン、センサ等のローエンド生産ライン共に、需要が大変活況を呈している。半導体100兆円市場の時代が近づいていると思われる。 またIoTは、全てをインターネットに繋ぐ社会変革と同時に、集中制御から自立分散制御への変革も加速する。全てをクラウドに繋ぐのではなく、M2Mやエッジデバイスを活用した分散制御が必須になるため、汎用化を追求する従来のビジネスモデルからカスタム化を追究するビジネスモデルの重要度が増す。 以上の大変革時代の到来を、いつものように大変興味深い具体的な様々な事例で説明された。 |
◆講演:「コア技術を持つベンチャーが日本の未来を創る:HAB研究会のこれまでと今後」※講演資料PDFはこちら 南部 修太郎 (NPO法人 高周波・アナログ半導体ビジネス研究会 理事長) |
我国のベンチャーの課題として、開業率/廃業率が米国の約1/3と低いことに加え、有力な技術ベンチャーが少ないことが知られている。しかも、我国のGDPに対するベンチャーキャピタル投資ランキングが世界で25位、一人当たりのGDPランキングが22位、時間当たりの労働生産性が先進7ヶ国中最下位であることなど、いずれも我国の成長性の低さを物語る。 この解決のため、政府も2016年に、最新のベンチャー振興策として、「ベンチャーチャレンジ2020」という政策を発表した。また2016年辺りから、大規模金融緩和策のお蔭か、第二次ベンチャーブームとも言える状況が起きている。しかし、2000年頃から2005年頃にかけての第一次ベンチャーブームの失敗から、もっと学ぶ必要があるのではないのだろうか。また我国の産業の振興に必要なのは、世界の産業振興をリードするような技術ベンチャーの振興であった筈である。今後もHAB研究会は、そのような技術ベンチャーの振興を目指していく。 |
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