高周波アナログ半導体ビジネス研究会

セミナー報告 ≫第57回セミナー
令和元年度日台産業協力架け橋プロジェクト事業
第57回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告
       
          


□テーマ:「台湾のユニコーン・ベンチャー創出活動と有力技術ベンチャーの紹介」
□日 時: 令和元年10月11日(金) 13:30~17:00
□場 所: 京都テルサ 西館3階 第2会議室 (京都府民総合交流プラザ) 


 従来の先端技術事業分野に大きなパラダイムシフトが起きつつあり、台湾でもユニコーン技術ベンチャー創出活動が活発になっている。そのためHAB研は数年前から日台の有力企業と有力技術ベンチャーの事業連携支援活動に取り組んでいる。今回のセミナーでは、「台湾のユニコーン・ベンチャー創出活動と有力技術ベンチャーの紹介」をテーマに、日台交流協会のご支援のもと、アジア経済研究所研究推進部佐藤部長や台湾のユニコーン技術ベンチャー3社をお招きしてそれぞれ台湾の産業・科学技術政策、事業活動・有力技術を紹介していただいた。台湾と日本のベンチャー推進政策の異同や、それぞれベンチャー企業の技術の仕組みについて活発な質疑、討論が行われた。
 セミナー終了後の交流会でも、講師を囲み今後の日台連携支援活動の方向性等、熱心な意見交換が行われた。日本と台湾企業の事業連携に向けてまた一歩を踏み出したのは大きな収穫だった。

 以下、講演の概要をまとめる。


◆講演:「台湾の産業政策・科学技術政策と ベンチャーの創出と育成」
     佐藤 幸人 氏(日本貿易振興機構(JETRO) アジア経済研究所 新領域研究センター長)
 台湾エレクトロニクス産業の生成とグローバル競争優位の確立は、政府の育成政策と密接な関係にある。近年、台湾はイノベーションを重視し、ベンチャーの創出と育成に多くの施策を打ち出している。講演では台湾関連政策の主管機関(主に経済部と科技部)とそれぞれが推進する政策を詳細に紹介した。また様々な機関が関わっている台湾の産業・科学技術政策は重複しているが、結果的に各機関間の競争を促している効果があると述べた。特に台湾ベンチャーの創出・育成は、執行機関の工業技術研究院(ITRI)のDNA(半導体の成功モデル)に深く組み込まれ、現在も継続していることに注目すべきとした。

◆講演:「ヒューマンマシンインタフェース(HMI)の発展と未来への展望」
     李 蔚 霖 氏(酷手科技 Coolso Technology技術長 http://www.coolso.com.tw/ )
                          ウェアラブルコントローラの開発
 酷手科技(Coolso Technology)は2017年に設立したITRIのスピンオフベンチャー企業である。講演ではヒューマンマシンインタフェース(以下、HMI)が進化している中で、作業環境によって人間に適しているHMIが異なると述べたうえ、未来のスマートホームなどに最適なHMIは音声認識なのかという問題提起を行い、独自のHMI技術を提案した。このHMI技術は、リストバンド内に設置された半導体レーザにより腕の筋肉の動きを感知し、無線通信で機器に送信して、手(指)のジェスチャーだけで、様々な機器の操作を可能にするものである。この技術はライバル社より3年も早い2017年に開発に成功し、台湾や日本を含む海外で多くの賞を獲得した。また本講演の際に本技術を実演し、技術応用の広がりを示した。フロアからは、本技術の原理や仕組みなどについて強い関心を寄せられた。

◆講演:「P2P直接接続/受送信アプリケーションおよび関連サービス
       :分散スマートデバイスを分散ネットワークのノードとして接続することを通じて」
     洪 启 渊 氏(恒浤股份有限公司  Heng Hung Co., Limited ioeX CEO
              https://www.henghung.com/ )  IoTネットワーク関連

 恒浤股份有限公司は2016年2月に鴻海グループからスピンオフした、ブロックチェーン機能及びIoTの応用開発・実用化に特化している企業である。主な業務は自社パブリックブロックチェーン:ioeXの設置と運営である。IoTの普及に伴う膨大化する情報を適切に処理するために同社は中央集権型システム(サーバ)を利用する従来のIoTネットワークに対し、ブロックチェーンを利用する分散型(Decentralization)システムを提案する。この分散型システムを使うことで、IoTにおけるスマート設備は、最も相応しいノードに接続し、独立のネットワークを構築していくことができ、システムのコスト構造を大幅に改善できる。講演では同社の技術を利用したioeXアプリを操作し、遠隔情報へのアクセスの有効性を披露した。


◆講演:「次世代光通信システムICの挑戦」
     石 家 豪 氏(獵速科技 Teletrx Co. https://teletrx.com/ )超高速インターフェース関連
 獵速科技は2018年に設立した次世代光通信チップの開発に取り組むスタートアップ企業である。同社は、次世代通信の高速化に伴い発生したデータの受送信間のギャップを修正するために、224Gbpsという高速化を可能にして大幅に帯域幅を拡張できる画期的なSerDes IPおよび相互接続ソリューションを提供する。本技術によれば、2倍の伝送速度、1/10のコスト、100倍の低消費電力のIPが可能になる。本技術は製造工程の高性能化によるのではなく、独自の電子回路イノベーションによる混合信号アーキテクチャの開発により達成された。この技術はIBMやメディアテック等の競争相手に比べ、高速・広帯域と低電力に関して圧倒的な優位性を有する。また半導体関係の世界最高の国際学会であるISSCCのPaper Awardも受賞している。


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