第62回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告 |
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□テーマ:「台湾の有力技術ベンチャーを育むベンチャー生態系の動向」 □日 時: 令和3年1月19日(水) 14:00~17:00 □場 所: Web(Zoom)セミナ HAB研はこれまでHAB研究会を核とする技術ベンチャー生態系を構築し、日台の有力企業と有力技術ベンチャーの事業連携支援活動を通じて、日本と台湾ベンチャー企業との連携強化を図ってきた。 特に最近、台湾ではVCやCVC、アクセラレータといった技術ベンチャー生態系に属されるアクターの活動が急速に活発になり、台湾技術ベンチャーの生存率の向上や生態系の拡大に寄与しているようだ。 そこで今回は、台湾の技術ベンチャー生態系、特に大学発ベンチャーの活動に詳しい台湾大学陳玠甫(Jeff Chen)教授や、ITRI系ベンチャーキャピタルとして台湾の技術ベンチャーの育成や生態系の構築で大きな役割を果たしているIndustrial Technology Investment Corporation(ITIC)の韓宗憲(Bruce Han)副社長、ユニークな技術ベンチャー支援プログラムで実績をあげているITRIのスピンオフアクセラレータStarFabの劉晏蓉CEOを講師にお招きして、Webセミナを開催した。それぞれ台湾の技術ベンチャー生態系の生成において、大学発ベンチャーの活動やITIC・StarFabの支援の仕組みと影響について講演していただきました。各講演後の質疑応答においては、Zoomのチャットからもライブからも多くの質問をいただき、活発な討論が行われました。 以下、講演の概要をまとめる。 |
◆講演:「台湾の大学発ベンチャーの発展と課題」 陳玠甫(Jeff Chen)氏(国立台湾大学 管理学院 大学院商学研究科 教授) |
本講演では、まず日本と台湾の比較を行ったうえ、台湾の課題、特にハードウェアへの過剰投資問題を取り上げ、この問題が顕在化になった背景を台湾の強み、強みが形成される政策的要因、台湾半導体産業の垂直分業型モデルの確立、台湾サプライチェーンの整備、米中貿易戦争の台湾半導体産業への影響などから解説していただきました。この課題を解決するために、台湾政府は第二の成長軸としてバイオITや精密ヘルスケア分野ベンチャーの支援にシフトしています。特に、バイオ医療分野におけるベンチャー活動の現状や世界との連携状況、バイオクラスターの構築現状などを説明しただきました。最後に、陳教授ご自身の経験に基づき台湾と世界大学の連携プログラムも紹介していただきました。質疑応答では、台湾の技術ベンチャーは株式公開よりもサプライチェーンの一環として既存大企業に吸収される傾向があるなど、台湾技術ベンチャーの特徴も明らかになりました。 |
◆講演:「The Cradles of Boosting Tech Innovation Ecosystems in Taiwan」 韓宗憲(Bruce Han)氏(ITIC Vice President) |
本講演は台湾のイノベーション環境は如何に形成されてきたのかをメイントピックとしていました。まず、台湾製造業が世界のサプライチェーンで担う役割とプレゼンスが大きい反面、ブランド力が弱いというアンバランスの現状を紹介し、台湾企業は個別よりもネットワークとして力を発揮しているという特徴を示しました。これは台湾のエコシステムの原点であり、エコシステムの関係性形成や成長の理由を歴史・文化、台湾人の性格、制度面などから探りました。 そして、台湾のイノベーションエコシステムを作り出したITRIの紹介を通じて、ITICがITRIの中型投資機関としてベンチャーエコシステムの構築で重要な役割を果たしたことも明らかになりました。最後に、ITICが携わった有名なTSMCやAUOの設立投資案件を挙げ、ITICがITRIと連携し研究開発、生産、管理、資金調達の面で多くのサポートを提供したことも述べられました。 |
◆講演:「The trend of Taiwan’s venture ecosystem that nurtures tech ventures」 劉晏蓉(Yen Jung LIU)氏(StarFab CEO) |
本講演では、①StarFabの役割、②テーマ別イノベーションによるスタートアップ企業への成長サポートメカニズム、③StarFabが行うテーマ別イノベーションが台湾の大企業とスタートアップ企業に与える影響の3つのトピックスを取り上げられていました。StarFabはスタートアップ企業の製品を実証済みのソリューションにつなげていくという点はほかにない最大な特徴です。 現在、StarFabにはクラウド、AI・ロボティックス、IoT、スマートリテーリング、グローバルの5つのテーマのアクセラレータプログラムがあり、それぞれのサポート内容を詳しく説明していただきました。スタートアップ企業の孵化、またスタートアップ企業と大企業との連携ステップ、共同イノベーションプラットフォームについても個別の事例を挙げながら詳しく紹介していだたきました。 |
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