高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第72回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告
     


□ テーマ:「我国半導体産業の未来像を展望する」
□ 日 時: 令和5年10月2日(月)14:00~17:00
□ 形 式: 京都テルサ/Webセミナ併用


 我国の半導体産業の復活振興を目指す様々な国家事業が始まっている。2030年に国内売上高15兆円を目標とする、巨額の投資事業である。
 今回のセミナでは、「我国半導体産業の未来像を展望する」というテーマで、この国家戦略の中核的な役割を担う、経産省主催の「半導体・デジタル産業戦略検討会議」委員である若林教授にその概要を、また我国半導体産業の未来を担うと期待される技術である先端実装技術や、我国半導体産業の重要な応用事業分野であるBeyond5Gの未来像について、この分野でご活躍の2名の方にご講演いただいた。
 セミナには会場に26名、リモートで20名の方々が参加され、活発な議論、質疑応答を展開して頂いた。
 以下、講演の概要をまとめる。

◆基調講演:「半導体産業の復活、最後で最大の機会を生かせるか」
      若林 秀樹 氏(東京理科大学 経営学研究科 技術経営専攻 教授)
 現在、日本の産業構造、事業構造を考えるうえで半導体産業の重要性が指摘されています。また、昨今の国際状況を考慮すると安全保障の観点から有事の際のサプライチェーンを確保することが重要となってきます。政府も経産省を中心に支援する体制をとり、熊本にTSMCの工場を誘致、北海道の千歳に新しくRapidusの工場を建設し、技術開発をLSTC(技術研究組合先端半導体技術センターが支援する体制をとりました。この体制で様々な点で乗り越えないといけない課題があります。技術開発、製造拠点の整備の他にも人材制度、金融制度を整えていかなければいけないし、アプリケーションでは日本がデジタル化を推し進めるためにもデータセンタも全国に配置されなければいけない。技術面では半導体プロセスの微細化を進める一方チップレット技術によりTAT短縮がはかられる。この半導体政策に対する批判もあるが、日本の国力回復の最後の機会であり、最大のチャンスでもあります。多くの方の主体的な参加、もしくは応援をしていただきたい。
(参考:若林氏著「デジタル列島進化論」)
◆講演:「我国の先端実装技術関連産業の未来像」
     西尾 俊彦 氏(株式会社SBRテクノロジー 代表取締役)

 最近のAI技術の進歩は目覚ましいものがあり、規模はさらに拡大してきている。しかし半導体プロセスは微細化に伴いコストの上昇は許容できないレベルに達している。これを解決するアプローチとしてチップレット化が進められる。チップレット技術は多くのCoreやMemory Chipを搭載できるため最新の高速メモリを搭載することができるだけでなく、これまで使われている従来のIPのchipを再利用でき、また開発、量産時のTATやコストの点でも有利である。各半導体メーカは様々なアプローチをしているが、日本はFlipChip Substrateでは世界をリードしている。さらに今後の高速化、省電力化には光電融合の技術も使われていくであろう。
◆講演:「日本におけるBeyond 5G/6G関連産業の未来像」
     小西 聡 氏(株式会社KDDI総合研究所 先端技術研究所 所長)
 日本では2020年3月に5Gサービス開始した。世界では2023年5月の時点でかなりの国で導入がされており、4Gの時より発展途上国の立ち上がりが早い。日本ではサービス内容、エリアで期待外れと言われている。一方、モバイル通信のトラヒック量は3年間で2.2倍となっており、設備投資が必要となっているが、回線収入(ARPU)の伸びが低迷のためB-to-Bを創出するなどのマネタイズが急務となっている。Beyond5G/6Gでは5G性能の10倍とエリアの拡大、センサー、AIとの融合を目指しているが国際標準化は始まったばかり。   
 日本のBeyond5G推進コンソーシアムから6つの利用シナリオをITU-Rに提案し採用されている。技術的には強靭な光ネットワーク、セルフリーによる通信品質向上、仮想世界と現実世界をつなぐ3D点群圧縮技術が開発されている。

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