高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第74回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告
        


□ テーマ:「メタネーション(CO2ガス再燃料化)技術の現状と動向」
□ 日 時: 令和6年1月30日(火)13:30~16:30
□ 形 式: 京都テルサ/Webセミナ併用


 現在、地球温暖化対策としてCO2の削減が一つの方向と考えられています。火力発電所などで多量に排出されるCO2ガスを原料とし、新規の触媒を用いてメタンガスを生成するメタネーション技術は低炭素社会を実現する切り札と期待されています。製造されたメタンガスは都市ガスなどで再利用されるため、CO2を再利用することで我国のゼロカーボン社会を達成できる可能性を秘めています。
 今回は、この分野で先端的な取り組みをされている3名の方に、その最新情報と将来展望について、ご講演をお願いしました。
 会場参加者と合わせて34名の参加をいただき、活発な質擬、応答をいただいきました。

◆講演:「Daigasグループによる持続可能な
      カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組み」
      森田 哲司  氏(大阪ガス株式会社 エネルギー技術研究所長)
 大阪ガスの脱炭素に向けた方針であるカーボンニュートラル・ビジョンの取り組み内容について講演された。メタネーション技術でe-メタンを作る3つの方法(サバティエ、バイオ、SOEC)について説明された。ゼロ・カーボンエミッションのためには、再生電力、電解で得る水素など、全て炭素排出をしないプロセス開発が必要になる。このため、実現コストが最大の課題になる。その結果、再生可能エネルギーのコストの低い海外で進めることが必須になる。大阪ガスは2030年までに都市ガスの1%をメタネーション化することを公約し、計画を進めている。
◆講演:「脱炭素社会構築に貢献する日立造船のPower to Gas 技術」
     泉屋 宏一 氏(日立造船株式会社 脱炭素化事業本部
               脱炭素化システムビジネスユニット PtG技術部 PtG開発グループ長) 

 日立造船のカーボンニュートラル社会実現について、2つの基幹技術、即ちグリーン水素とe-メタンの製造プラントの実証試験についての現状を説明された。水電解によるグリーン水素製造の有用な点は再生電力の不安定性にも対応できることであり、エネルギー貯蔵技術と見ることも出来る。現状では1MWで200m3のグリーン水素生成システムが製造している。変換効率は70%程度である。メタネーション触媒には独自のアモルファスNiを用いており、200℃でインライン型のものを採用している。メタネーションは発熱反応であるため、排熱を再利用することも将来的に可能である。日立造船は全てをプラントとして海外展開を進めている。
◆講演:メタネーション触媒の新展開」
     森 浩亮  氏(大阪大学大学院 工学研究科 マテリアル生産科学専攻 准教授)
 大阪大学ではメタネーション触媒の研究開発を行っている。触媒材料としてハステロイX(Ni, Cr, Fe, Mo)を粉状にし3Dプリンターで成型するインライン型の触媒を開発している。3Dプリンターの特長は反応表面積の変更やスキャンの方法などによって触媒性能を変えられることである。更に、職場良い材料開発の新しい方法として、水素分子がTiO2基板上などで電子と活性水素に分解しながら基板上を自由に動く水素スピルオーバーという現象を利用することを研究している。これにより、相分離するために作成できなかった新しいナノ触媒を作成することに成功した。このナノ触媒は粒子の安定性に優れており、COへの吸着力が大きいため不要なCOの排出を抑制できる可能性もある。新たなハイエントロピー合金製作の方法を確立し、グリーン水素を活用展開する研究は今後、一層重要になると思われる。

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