高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第76回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告
□ テーマ:「地球温暖化の原因を掘り下げる」
□ 日 時: 令和6年10月24日(木)14:00~17:00
□ 形 式: Web(Zoom)配信


 近年の世界規模の猛烈な暑さなどの異常な気候を経験し、地球の温暖化を肌で感じるようになりました。1967年に真鍋淑郎氏が、CO2が地球上の気温上昇に大きく関わっていることを発表(2021年にノーベル物理学賞受賞)、1988年に地球温暖化政府パネル(IPCC)設立、1997年に国際連合枠組条約の京都議定書が署名、2021年IPCC第6次評価報告書が出されるなど、国際的な取組みがなされてきています。この温暖化を食い止めるのに、温室効果ガス発生の削減が強く叫ばれていますが、まだ人々の意識の中に強く根付いているようには思われません。今回のセミナでは「地球温暖化の原因を掘り下げる」というテーマでこの分野の専門の3名の方から以下の内容で講演をしていただきました。
 セミナでは28名の方が参加され、活発な質疑応答がなされました。

◆講演:「気候の危機と社会の大転換」
             江守 正多 氏(東京大学 未来ビジョン研究センター 教授)
 地球温暖化は人間の活動によるものだということは疑う余地のないことであり、その仕組みは太陽からのエネルギーで温められた地球が人間の活動により増加したCO2などの温室効果ガスの影響で宇宙への熱の放散が十分に行われなくなっていることでおきる。その温暖化により、洪水、海面上昇、熱波、生態系の損失、食料不足などがおきると思われる。現時点では温室効果ガスの排出削減ペースは非常に遅い。IPCCで報告されているように、気候変動対策は人類にとって喫緊の課題であり、早急に加速する必要がある。質疑応答の中で、人間が活動する際に発生する廃熱が人口増、AIの発達などにより、増加して温暖化に影響を及ぼすのではないかという質問があったが、現時点では太陽からの熱に比べれば、十分小さく無視できるレベルであるとのことであった。
なお、江守氏はIPCC第5次、第6次評価報告書主執筆者です。

◆講演:「気候危機:激増する異常気象!なぜ? 春と秋が消え「二季」に?」
             立花 義裕 氏 (三重大学大学院 生物資源学研究科 教授)
 各地で猛暑などの異常気象が観測されている。原因は地球温暖化でそれは人間の活動による二酸化炭素などの温室効果ガスの増加である。海面水温の上昇が水蒸気の発生を促し積乱雲を作り、豪雨を引き起こす。また、北極圏の温暖化により北極と赤道付近の温度差が小さくなることにより、偏西風の蛇行がおきやすくなる。それにより、寒冷渦が出来やすく、台風の進路も異常な動きとなったり、冬の寒波が起きやすくなったりする。結果、春と秋がない夏と冬の二季となっている。
 現状、人々の意識には気候変動への危機感がない。Tipping Pointを超えると元に戻らないという警鐘をならされた。

◆講演:「持続可能でレジリエントな社会に向けた社会システム変容を考える」
             小嶋 公史 氏 ((公財)地球環境戦略研究機関(IGES)関西研究センター プログラムディレクター)
 地球環境問題として、温暖化、気候変動、生物多様性喪失、熱帯林破壊、砂漠化、水資源枯渇などがあり、それぞれの問題が複雑に絡み合っている。また現行の持続可能ではない社会システムについても考えていかなくてはならない。IGESではこれらの課題解決に向け、様々な政策形成プロセスや広い議論へのインパクトを創出している。繰り返されている環境破壊、人口増加、エネルギー消費の増大などで持続可能性はおびやかされている。レジリエントな社会をどう作っていくのか、新しい経済モデルが必要であろう。
 さらには福島原発事故のように、外部からの制御が喪失したときに暴走するような装置はもし事故が起きたときの被害は膨大で、そのリスクを計測できない。予防原則の趣旨が理解される社会でないといけない。


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