高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第77回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告
□ テーマ:「日台連携;世界を変えそうな台湾技術ベンチャー4」
□ 日 時: 令和6年12月6日(金)14:00~17:00
□ 形 式: Web(Zoom)配信


 HAB研は2019年から台湾スタートアップ・エコシステムや有力技術ベンチャーについて理解を深めるために年1回日台連携セミナを開催しています。今年度も台湾のITRIといった機関の協力のもと、台湾のVC・CVC分野で豊富な経験を持つCathay Venture Inc.マネジャーの陳畊兆氏や、AI 省エネソリューションを提供し台湾のエネルギー効率改善模範賞を6年連続受賞しているEcofirst Technology Co.,Ltd CEOの闕隆一氏、ITRIグリーンエネルギー研究所で20年以上にわたる研究開発を経て2023年にスピンオフしたBlade Hydrogen Green Technology Ltd. Co.創業者の林明憲博士をお招きしてご講演いただきました。それぞれの講演では事業展開、コア技術やビジネスモデル、IPOの状況等を紹介していただきました。

◆講演:「コロナ後の台湾のベンチャーキャピタル概況」
          陳 畊 兆 氏(Cathay Venture Inc./國泰創業投資股有限公司・投資アシスタント マネジャー)
 本講演では、講演者がCathay Venture Inc.を紹介し、これまで投資に携わる経験に基づき、コロナ禍の影響や台湾ベンチャーキャピタルの現状及び投資先としての台湾の魅力を説明しました。初期の台湾の投資は内需が小さく多くのスタートアップ企業は海外に資金を求めていました。コロナ禍は世界に大きなダメージをもたらしたが、2022-2023年のスタートアップのエコシステムバリューを見ると、台北は大きく成長していることが確認できます。ほかに、コロナ禍後に台湾で起きた投資の変化として、CVCはVCを上回り、現在台湾での最大の投資項目となり、その金額(17億米ドル)も2022年にVCの2倍まで達しました。また、上場の条件の緩和やスタートアップ企業の投資者制限の撤廃などにより、海外からの上場も増え、スタートアップ投資者も激増する見込みです(30万から1300万へ)。台湾はICT機器のラピッドプロトタイピングと大量生産に長けており、ハイコスパの技術力、ESGに優しい、公正な早期投資といった魅力を持っています。今後、新規企業は台湾エコシステムに加入する際、政府や情報提供者、資金提供者、マッチング組織、OEM協力者などを如何に統合するかはポイントとなり、失敗を許せるエコシステム文化の醸成も急務となります。質疑応答では、台湾投資市場のディープテックへの関心度や、台湾でIPO上場を準備する日本企業や海外企業の概況などについての質問がありました。
(注)Cathay Venture Inc.<https://www.cathayholdings.com/holdings/cathayventure>
◆講演:「AI(空調省エネアプリケーション)」
          闕 隆一氏(台灣愛淨節能科技有限公司 Ecofirst Technology Co.,Ltd CEO) 
 本講演は、Ecofirst Technology社のソリューションやAI省エネ制御システム、HVAC(空調システム)制御コア技術、システム特徴、導入実績などを説明しました。同社が提供するソリューションはチラーシステムのアップデート、インバーターの導入、AI省エネ制御の3つの段階に対応しますが、いずれも従来のAIと違って既存のハードウェアに装着するのみで省エネを達成できます。これはディープラーニングアーキテクチャを使い動的な冷房要件に対応しながら冷房効率を最適化する同社のコア技術によって実現されます。AI省エネ制御システム(AccuSaveAITM)の構築にあたって、既存のハードウェアをSCADA(GUI)で繋げ、国際標準のAPIを介してデータ収集を行う一方、AIホスト機を設置することによって空調システムを制御します。このようなシステムは独立システムデータ収集を行う従来の自動制御仕組みよりも優れています。この仕組みはすでに台湾大手企業など50社以上を対象に50%以上の電力コストの削減を実現した実績を持っています。質疑応答では、IPO状況やディープラーニングでの差別化ポイントについての質問がありました。後者について、ディーブラーニングはAI技術、IoT、物理などのマルチドメインの技術力によって支えられる点、既存のハードウェア・システムからデータを活用できる点は差別化のポイントとなります。
(注)Ecofirst Technology Co.,Ltd<https://ecofirst.com.tw/>
◆講演:「High CP PEMFC Fuel Cell System」
          林明 憲博士(綠能科技股有限公司 Blade Hydrogen Green Technology Ltd. Co.創業者)
 本講演では、主要製品の燃料電池の原理やコア技術、パフォーマンス、運搬方法、水素スタンドの設計について説明していただきました。同社の製品は他社と差別化するために、安価な水素の入手を課題に半導体・石油化学工業の副産物である水素のリユースに着目しています。コア技術は耐久性に優れた金属プレート、自動スタックアセンブリ、燃料電池システムのBOP制御が挙げられます。工業副産物の水素を使用することで同社の燃料電池は低コスト、長い耐久性、軽量コンパクト、自動組立などの点において競争力を持っています。特許については、燃料電池用水素フィードバックシステム及び方法など、計8件の発明特許を取得しました。同社の燃料電池に水素とアンモニアの混合ガスを使用するのは、COが発生せず運搬も安全だという利点があるためです。燃料電池のほか、燃料電池のモジュールを運搬するための物流車両や充電のための水素ステーション(2006年に台湾初)の整備、補助装置(クーラーなど)の開発も進めています。水素ステーションの場合、2017年に350バールで水素の補充時間を2分以下に達成し、現在700バールの水素ステーションを開発中です。質疑応答では、同社の燃料電池の原理について討論し、純水素使用の燃料電池の開発も進んでいることが明らかになりました。
(注)Blade Hydrogen Green Technology Ltd. Co.<https://bladehgreen.com/>

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