高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第30回 高周波・アナログ半導体技術セミナー(第70回IP設計委員会セミナ)報告
           


□テーマ:「医療における光イメージングによる可視化、診断技術」
□日 時: 平成24年11月7日(水)13:30-17:00
□場 所: かながわサイエンスパーク 西棟7F 709会議室


 第70回IP・設計委員会セミナーが11月7日川崎市のかながわサイエンスパーク(KSP)にて行われました。今回はテーマを「医療における光イメージングによる可視化、診断技術」とし、横浜市経済局及び潟Pイエスピーのご協力を得、また(財)木原記念横浜生命科学振興財団、NPO法人高周波・アナログ半導体ビジネス研究会(HAB研)、新横浜クラスター交流会、QoL-SN推進協議会のご後援のもと開催されました。以下に講演内容の概略を御報告致します。

◆講演:「光イメージング脳機能測定装置」
     大橋 三男 氏 ((株)スペクトラテック 代表取締役)
 本講演では、光による脳機能測定についての詳細な解説と同社の脳機能測定装置の紹介がありました。
はじめに、文明の高度化高齢化により脳機能障害に関する症例が増加しており、脳関連の診断に必要な医療器具の需要が増えている実態が紹介され、様々な脳機能測定法の紹介があり、分解能や価格の比較などが示されました。その中から脳血流を検出するfNIRS(functional Near Infrared Spectroscopy)が採り上げられ詳細な説明がありました。すなわち、近赤外光が皮膚や骨などを透過し、血液(ヘモグロビン)で吸収される事を利用した光脳機能測定(fNIRS)について、測定原理、生体情報の取得原理などの解説があり、そこでは光多重偏重が必要とされることの説明があり、その手法(TDMA、FDMA,CDMA)について生体情報の取得や耐干渉波性能などを含め詳細な解説がありました。
 最後に(株)スペクトラテックの製品紹介として先ずSpectratech OEG-16の説明がありました。これは光脳機能計測の裾野を広げる事を目的として開発され、前頭葉専用の脳機能測定装置となっており、移動しての計測が可能であり且つ低価格であるとの説明がありました。
 もう一つの製品としてSpectratech OEG-SpO2が紹介されましたが、これは光イメージング脳機能測定装置であり、従来は血流変化しか測定出来なかったものが、脈拍数変化とこの装置が加わる事で、より深い脳機能検討が可能になったとの説明がありました。
◆講演:「ICG蛍光を用いた光イメージング技術の臨床応用」
     前田 英樹 氏 (浜松ホトニクス(株) システム事業部 システム営業推進部 国内G バイオ・メディカル担当)
 本講演では、ICG(インドシアニングリーン)蛍光を用いた光イメージング技術の臨床応用について、装置原理、応用分野、医療における蛍光検出の未来などについて詳細な解説がありました。先ず、当技術開発の経緯として、外科医から目では確認できない組織の下の観察をしたい、手術中の確認がしたい、血管・リンパ管を見たい、それらを安く手軽にできるようにしたいという要望が寄せられ、これに応えるものとして蛍光を用いた光イメージング技術が浮上したとの説明がありました。
 次いで装置原理の解説があり、血管やリンパ管にICGを注入し、生体組織の外から励起光(LED760nm)を当て、それに反応してICGから発する蛍光をPDE(Photo Dynamic Eye)で検出するという説明が、ICG蛍光の蛍光特性(生体を透過する波長特性)の説明などと共にありました。この技術の応用分野はかなり広い範囲に及んでいますが、例として乳がんセンチネル節生検について多くの写真を用いてかなり詳しい紹介がありました。センチネルリンパ節を見つける方法としてRI法、色素法、近赤外蛍光法などが紹介され、ここでは近赤外蛍光法の優位性が示されました。がんの転移などによりリンパ節を郭清(取り除く)した時に発生する合併症状の典型例としてリンパ浮腫が挙げられ、その診断と治療についての説明がありました。
 その他の応用分野として微少肝臓がんの検出が取り上げられ、ICGが血漿タンパクと結合し殆どが肝臓にトラップされる事を利用して検出する技術が紹介されました。
 蛍光検出技術の未来としては「がん細胞だけを光らせろ」という事で、単なる検出に留まらず治療への応用を目指すとの事でした。
◆講演:「(株)島津製作所の分子イメージングへの取り組み」
      小関 英一 氏 (鞄津製作所 基盤技術研究所 主幹研究員)
 本講演は、基本的には(株)島津製作所における分子イメージングへの取り組みの紹介ですが、単に一企業の技術紹介に留まらず、分子イメージング全体の先端技術動向を解説するものとなっていました。そして極めて専門的詳細技術が、多くのデータや写真を用いて紹介されました。
 先ず、バイオ領域と医療領域の新しい融合領域で、先端的な計測・分析技術が生み出される環境が整いつつあるとの認識が示され、同社の取り組みが紹介されました。すなわち(株)島津製作所では医療機器事業部でイメージング機器開発、分析計測事業部でバイオマーカー探索、基盤技術研究所で分子プローブ開発に取り組んでおり、それらを通じて臨床応用、創薬支援を追求しているとのことでした。ここでは特にEPR効果(Enhanced Permeability and Retention Effect)を利用した分子プローブの開発について専門的な解説がなされました。両親媒性ブロックポリマー(ポリサルコシン、ポリ乳酸)、蛍光剤(ICG)、RI(放射性同位体)、抗がん剤(パクリタキセルなど)、光増感剤(光線力学治療)などを自己組織化して高分子ミセル(商品名ラクトソーム)をつくり、分子プローブあるいはDDS(Drug Delivery System)製剤とするとの事ですが、その特徴は腫瘍組織へ集積する、肝臓などの正常組織には集積しにくい(ステルス性)、血中半減期がPEG化リポソームと同程度、構造や組成による精密な粒子径制御が可能、生体内加水分解する、標識剤や抗がん剤を内包できる、ペプチドや抗体による化学修飾が出来る事などとの事でした。
 そして、ポリサルコシンによるステルス効果、分子構造による形態制御、添加材配合による粒径制御、腫瘍組織への集積、蛍光、PETイメージング、血中滞留性などについてラクトソームでの例を示して説明されました。
 さらにナノ粒子による診断と治療の融合として、蛍光イメージングからPET診断薬へそして治療薬へとつながる流れが示され、正常組織の壊死を引き起こさず繰り返し投与が可能な治療薬の開発が進んでいる事が示されました。
 そして診断、治療への応用として光線力学療法、内照射療法などの紹介がありました。最後に共同研究機関として京都大学(工学研究科、医学研究科、薬学研究科)、筑波大学(人間総合科学研究科)、群馬大学(生体調整研、工学研究科)、JST京都市地域結集型共同研究事業その他の紹介があり、この分野で大がかりな研究開発が進行している事がわかりました。

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