高周波アナログ半導体ビジネス研究会

セミナー報告 ≫第43回セミナー
第43回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告
        

□テーマ:「アグリビジネス用IoT技術の動向」
□日 時: 平成28年6月29日(水) 14:00~17:00
□場 所: 京都テルサ 西館3階 第2会議室 (京都府民総合交流プラザ) 


 第43回高周波・アナログ半導体技術セミナが、平成28年6月29日に京都テルサ西館3階第2会議室(京都市南区)で開催された。今回のテーマは「アグリビジネス用IoT技術の動向」で、この分野で活躍されている三名の方から有意義な講演があった。時期を得たテーマでもあったため、幅広い分野の方々に関心を持たれ各方面から総勢50名程の参加があり、アグリビジネス用IoT技術の現状と今後の展望などについて活発な質疑、討論が行われた。またセミナ終了後の交流会にも多くの方が参加され、講演会場では交わせないような意見交換や情報交換が熱くなされ、参加者同士の新たな、深いネットワーク作りのきっかけを生み出す場となった。
 以下、講演概要を報告する
◆基調講演:「パナソニックの農業取り組みとIoT技術への期待」
     松本 幸則 氏 (パナソニック(株)全社CTO室 技術戦略室 技術戦略課 主幹)
 冒頭、パナソニックの会社紹介、目指す姿について概観された後、自社の農業の取り組み体制・アグリ取り組みについて、この分野では長い歴史と経験もあるとの主張をされ、国内外での各種活動事例を紹介された。①家電事業で培った技術で次世代農業に取り組む、②安心・安全な「農産物」を効率的・安定に生産できる、③食の海外展開を含め幅広い役立ちを見ざす、との基本的なコンセプトの下、①人工光型植物工場②施設園芸③露地栽培のそれぞれの切り口からの具体的な活動事例が紹介された。また、IoTへの期待を、①環境データだけでなく生産結果データ②生産結果データだけでなく、途中過程データ③正常時データだけでなく,異常時データに、AI(アグリインフォマティックス)農業での取り組みと捉えている。さらに今後の期待する技術としては植物概観の樹勢・草勢の数値化や植物内部データのクロロフィル活性・代謝物他の非破壊測定などにも特徴を出そうとしていると説明された。
◆講演:「IoT技術の導入でアグリビジネスの競争関係や企業活動はどのような変革をもたらすのか― 
      <農機メーカーを例にして―>」
     後藤 智 氏 (PTCジャパン(株)ソリューション戦略企画室 ディレクトリ・フェロー)
 あらゆる“モノ”がインターネットに有機的に繋がっていくスマートコネクテッド製品が1996年以来誕生してきている背景を提唱者の一人マイケルE・ポーター教授のIoT競争戦略論(ハーバード・ビジネス・レビュー2015年4月号)を中心に動画なども交えながら概観された。そしてスマート製品、スマートコネクテッド製品、製品システムそして最終的には複合システムへと変遷する製造業のサービスビジネス化についてある米国のトラクターメーカーがどのように変わっていく可能性があるかが示された。例えば農機メーカーがIoT導入を図る動機は業務の効率化と戦略的差別化の視点から説明され、モノづくり、コトづくりで機械の安定稼働vs水道代の節約といったジレンマを抱えつつ取り組む事例が示された。IoTになっても競争のルールは従来と変わらないが、新規参入業者の脅威といった点についても触れられ、バリューチェーンの中の「サービス」「技術開発」「製造」「人事・労務管理」はどうなるのか、その上で最高データ解析責任者(CDO)を位置づけるべきとする新しい組織構造の必要性が説かれた。
◆講演:「手軽なIT農業を実現した温室内環境遠隔モニタリングシステム「みどりクラウド」
     井田 明 氏 ((株)セラク 新技術研究開発室)
 (株)セラクは、これまで新製品として、Androidを組み込んだ洗面台(スマート洗面台)、Androidで制御する(スマート野菜工場)を展開してきたが低コストで手軽に簡単に始められるシステムが必要との観点から、温室内環境遠隔モニタリングシステム「みどりクラウド」の開発に至る経緯が明らかにされた。そのコンセプトは、 ①安い初期導入コスト ②「説明を聞かなくても使える」手軽なUI/UX ③積極的に操作する必要なく受動的に使えるシステム ④既存設備に導入可能とするもので、みどりクラウド自体の役割は「計測」・「記録」とし、「判断」・「制御」は生産者・既存の設備に委ねるというビジネスモデルである。6種類7項目の計測、自動解析データ項目、記録についての詳細説明とともに、全国導入実績、活用イメージについて具体例が述べられた。

このぺージを閉じる

HAB研究会


NPO法人高周波・アナログ半導体ビジネス研究会 〒601-8047京都市南区東九条下殿田町13 九条CIDビル102 ㈱アセット・ウィッツ内
Tel. 075-681-7825  Fax. 075-681-7830   URL http://www.npo-hab.org