高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第44回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告
        

□テーマ:「医療用センサー技術の動向」
□日 時: 平成28年9月6日(火) 14:00~17:00
□場 所: 京都テルサ 西館3階 第2会議室 (京都府民総合交流プラザ) 


 第44回高周波・アナログ半導体技術セミナが、平成28年9月6日に京都テレサ西館3階第2会議室(京都市南区)で開催された。今回のテーマは「医療用センサー技術の動向」で、この分野で活躍されている三名の方から有意義な講演があった。今後高成長が期待されるビジネス分野であり、幅広い領域から多数の方々に参加いただいた。セミナは、センサーのみならず、システムを制御するSoC、医療分野におけるビジネス構成と言った広範囲に渡り、ビジネスを俯瞰する上でも有意義であり、活発な質疑応答があった。また、セミナ終了後の交流会でも、引き続き情報交換が行われ、参加者の方々にとっては、有益な場となったと感じた。

 以下、講演概要を報告する
◆講演:「ウェアラブル生体情報センサーの小型、低電力化技術」
     吉本 雅彦 氏 (神戸大学大学院 システム情報学研究科 教授)
 冒頭、現代社会の高齢化の進展に伴う医療課題について説明があり、平均寿命と健康寿命の差を縮めるために、生活習慣の改善を推進することの重要性の説明があった。そのためには、日常生活の中で生データ(心拍、加速度等)を常時収集して分析することが不可欠である。吉本研究室では、この生体情報の常時収集のために、NEDOの助成金を活用した超低消費電力で動作するセンサー+測定・通信を含めたSoC(System On Chip)の開発を進めている。「ノーマリーオフ・コンピューティング」と、可用性(ノイズ耐性向上)のための「自己相関を用いた心拍抽出」技術がポイントになる。「ノーマリーオフ・コンピューティング」では、不揮発性メモリ・不揮発性ロジックによる低消費電力化についての説明があり、瞬時心拍抽出ロバストアルゴリズム(自己相関を用いた心拍抽出)について解説があった。最後に将来の実用化に向けて消費電力の目標等が示された。

◆講演:「ウェアラブル生体センサと応用システム」
     樋口 行平 氏 (アフォードセンス(株) 代表取締役)
 最初に、アフォードセンス社について紹介があり、科学技術振興機構ERATO事業の前中センシング融合プロジェクトの成果を社会に還元するために設立されたとの説明があった。現在、絆創膏型生体センサ「Vitalgram」を順次改善を進め、製品化を目指しているが、日常生活を送りながら長時間の生体情報(心電・心拍・呼吸波形)を取得する上で、絆創膏型の優位性の説明があった。また、取得した生体情報を解析して「未病応用」に活用していくためのデータ分析の仕方、ICTを活用した「見守り・看取り」システムへの応用等サービスについての動きについて解説があった。最後に実際にセンサで生体データの取得のデモがあり、また、絆創膏型生体センサのサンプル回覧があった。

◆講演:「健康医療ビジネスの動向と医療用センサの方向性」
     志賀 利一 氏 (オムロンヘルスケア(株) 技術開発統括部 統括部長付専門職)
 最初にオムロンヘルスケア社の紹介があり、血圧計では世界1位であり、国内では医療機関で通常使われる機器であり、血圧についてはいつもリファレンスに使われることの優位性について説明があった。現在多くの異業種(通信サービス、ITサービス)がヘルスケア市場に参入してきているが、ビッグデータとして大量の医療データを持ったとしても、臨床データで裏付けられたデータでなければ活用されない。したがって、この市場ではリファレンスとなる裏付けのあるデータを取得する装置を持つことが大きな優位性となる。最近非常に多くのヘルスケアに関する新製品の発表が続いているが、ターゲットを何にするかによって、計測すべき指標も変わってくる。オムロンヘルスケアでは、疾病管理領域としての「高血圧領域」に注力しており、そのためには血圧を家庭で正確に測定することであり、最終的には常時測定を目指していくと説明があった。最後に世界で色々と進んでいる医療用センサの実例の紹介があり、これを支えるデバイスについて、技術トレンド、次世代LSI開発への期待等説明があった。


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