高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第56回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告
       
          


□テーマ:「AI関連半導体技術の動向」
□日 時: 令和元年 8月30日(金) 13:30~17:00
□場 所: 京都テルサ 西館3階 第2会議室 (京都府民総合交流プラザ) 


 顔認証、自動翻訳、家電の最適化など、AIは急速に我々の生活に浸透し、将来的にはAIによる自動運転や人間に近いロボットの実現が期待されている。しかし、現在のAI処理は、超大な演算量とデータ量を必要とし、消費電力、リアルタイム性、コストなど多くの課題がある。そこで最近、これら課題を解決する技術として、センサーにより近い端末側でAI処理を行うエッジコンピューティングとそれを実現するAI半導体技術が開発されつつある。今回のセミナにおいては、我が国において開発中の特徴的なAI用チップもしくはFPGA技術について4件のご講演をいただいた。参加者は約50名で、活発な質疑、討論が行われた。

 またセミナ終了後の交流会でも、講師を囲んで技術ディスカッションや事業連携の可能性等、熱心な意見交換が行われた。

 以下、講演概要を報告する

◆講演:「AIチップの世界開発動向と日本の産学がとりうる戦略」
     本村 真人 氏(東京工業大学 教授)
 AI応用の勃興とともに、AIチップとそれを支えるアーキテクチャ技術の分野はゴールデンエージと呼ばれるほどの活況を呈している。その背景や世界の研究動向をわかりやすく解説頂くとともに講演者らのグループによる最近の研究成果をご紹介頂いた。また、今後の日本の産学プレーヤーがとるべき研究アプローチの方向性について、講演者の視点での考察を熱心にご説明頂いた。最後に、東京工業大学・科学技術創成研究院に講演者が新たに立ち上げたAIコンピューティング研究ユニットの概要と、そこで今後推進していく具体的な研究内容についての簡単なご紹介があった。


◆講演:「アルゴリズムとハードウェアの協調設計によるDeep Learning推論演算の高効率化」
     出口  淳 氏(東芝メモリ株式会社 メモリ技術研究所 主査)
 東芝メモリ(株)が開発中のDeep Learning推論演算の低電力化・高効率化を図るための2種類のDeep Learningアクセラレータの紹介があった。1つ目のアクセラレータでは、疑似抵抗変化型メモリに1bビットのデータを保持し、時間領域で加算・乗算等のアナログコンピューティングを行う演算方式を基本とし、演算の効率化のためにバイナリ構成を用いている。2つ目のアクセラレータでは、フィルタ毎の重みの最適量子化とビット可変の積和演算器により演算時間の短縮を図った。FPGAを用いてハードウェア実装を行い、平均ビット幅が小さいほどエネルギー効率が向上できることが示された。最後に、デバイス・回路からアーキテクチャ・アルゴリズムの相互理解と協調設計の重要性の指摘がなされた。


◆講演:「独自アーキテクチャ aIPE に基づく『エッジ プロセッサ』のご紹介(aIPE : ArchiTek Intelligence Pixel Engine)」
     高田 周一 氏(ArchiTek株式会社 代表取締役)
 ArchiTek(株)は、高度な計算機アーキテクチャを駆使し、低消費電力・低コストを実現する画像処理およびAI用の回路(エッジコンピューティング用IP)を販売することを目的に2011年に設立された。nVidiaなど多くが採用する多プロセッサ型のプログラマブル性能と、専用ASICの低コスト・低消費電力を兼ね備えた新しいアーキテクチャを提案され、一桁以上のコスト性能比を達成する長所を生かしたエッジならではの自動運転装置(FPGAで試作機動作中)、セキュリティ(アルゴリズム実装中)などの取り組みも併せて紹介された。また、このアーキテクチャをもとにしたLSI開発、28nm版および12nm版の2品種の具体的なチップ開発計画、ならびに年間出荷数70億個のCMOSセンサー市場に対する対応などの将来展望が紹介された。


◆講演:「エッジデバイスをAI化する汎用画像処理プロセッサの開発」
     齋藤 浩司 氏、浦西 義裕 氏(株式会社シンコム)
 (株)シンコムは、ASIC などの大規模集積回路の設計会社として創業し、2015年からAIのHW実装の開発に取り組んでいる。昨年からは東工大の中原准教授とのコラボレーションにより世界最先端のニューラルネットワークの圧縮及びHW実装技術を開発しており、それをもとにエッジAI開発サービスを提供している。ニューラルネットワーク圧縮は混合精度の量子化と枝刈りを組み合わせた独自の技術で、リアルタイム性と精度及び低消費電力を兼ね備えたエッジAIを実現可能とした。主に画像処理を目的とした各種AIの現状やエッジAIに求められる特徴の紹介と、ニューラルネットワークの圧縮手法、目的に応じたニューラルネットワークの設計、前処理・後処理による工夫、学習データの品質も含めてトータルで取り組むことがエッジAIの開発を行う上で重要であることが紹介された。



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