高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第60回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告
□テーマ:「生産性向上のための画像処理技術の動向」
□日 時: 令和2年9月15日(火) 14:00~17:00
□形 式: Web(Zoom)セミナ 


 今回のセミナは、現在、我国で大きな課題になっている、生産性向上のための有力な取り組みである画像処理技術をとりあげ、「生産性向上のための画像処理技術の動向」というテーマで、この分野で高名な九州大学谷口教授に基調講演をお願いすると共に、この分野でご活躍の下記の方々を講師としてお招きし、様々な具体的な開発事例をご紹介頂いた。
 また今回はコロナ禍を考慮し、急遽、ZoomによるWebセミナに変更して、実施した。コロナ禍のため、参加者は26名と従来に比べ少なかったが、今後の、コロナ禍との共存を考えたセミナ運営方法を検討する上で、大いに参考になった。

 以下、講演の概要をまとめる。

◆基調講演:「最近の画像処理技術の動向について」
     谷口 倫一郎 氏(九州大学大学院 システム情報科学研究院 教授)
 始めに、モデル・ドリブン型画像処理技術の代表である「SfM」や、データ・ドリブン型画像処理技術の代表である「深層学習(ディープラーニング)」等の概要と課題についてご講演頂いた。また具体的な応用例として、「ソーラーパネルの外観検査」のための、ドローンによるパネル画像の取得と「深層学習」技術によるその損傷領域検出に関する研究成果について紹介された。また同時に「深層学習」の課題についても言及された。次に基本的な画像処理技術である「背景差分」に「深層学習」を取り込んだ開発事例についても紹介された。さらに「機械学習」を用いて、体型・服のしわ等を復元できる3次元人体モデルの作成例や、植物の生長モデルを画像情報から構成して生長を予測する研究成果も紹介された。
◆講演:「少子高齢化が進むなかでの電力インフラ維持に不可欠な画像処理とは?」
     中島 慶人 氏((一財)電力中央研究所 エネルギーイノベーション創発センター
                デジタルトランスフォーメーションユニット サブユニットリーダー)
 電力ネットワークの要であるコンクリート電柱(コン柱)のメンテナンスに使われている画像処理技術を紹介された。コン柱は、電力会社管理分と電話会社管理分を合わせ、現在、我国に3300万本あるが、耐用年数が42年であり、今後耐用年数を超えるものが増えると予測されている。その、できるだけ人手を掛けずに計測しメンテナンスする仕組みの開発が必須であり、画像処理技術の応用導入が検討されている。コン柱は、曲げ試験によりその外観にひび割れが観測される。「SfM」により取得したコン柱の3次元外観画像より、そのひび割れの状態を画像処理することにより、定量的にコン柱の劣化度合いを推定することが可能である。
  この手法は、橋梁やビル等の他の建造物のメンテナンスや、崩落等の防災予測にも応用が可能と期待される。

◆講演:「生産現場における最新画像処理技術の紹介と
      カラー光切断方法を用いたジャガイモトリミングシステムの紹介」
     東本 貴武 氏(北菱電興株式会社 機器事業部 機器FA部SI課 課長)
     山田 光二 氏(株式会社馬場鐵工所 第二事業部 営業技術課 課長)
 北菱電興は三菱電機を始めとするFA商材やシステム提案を行う技術商社であり、馬場鐵工所は自動化や省力化装置等を開発製造する会社である。両社が共同開発したカラー光切断方法を用いたジャガイモトリミングシステムは、従来手作業によっておこなわれていたジャガイモの皮や汚れや芽を検出し取り除く作業を、初めて自動化したものである。その動画を紹介した。
 また北菱電興による様々な生産現場に導入された画像処理技術例として、被写体の輪郭の歪みを利用して姿勢を検出し自動でバラ積み部品をピッキングし検査するシステム、サーモグラフィーカメラによる特殊鋼・特殊合金の製造工程の生産温度の動的監視システムを紹介した。
 また北菱電興の深層学習外観検査ライブラリ「ViDi」として、登録したモデルの検出カウントツール、良否を学習し判別する検査ツール、検出物のタグ付けや欠陥を分類する品種判別ツール、かすれ文字・欠けた文字等の読み取りが可能な文字読み取りツールを紹介した。

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