高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第64回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告

       
□テーマ:地熱発電の現状と動向」
□日 時: 令和3年8月26日(木)14:00~17:00
□形 式: Web(Zoom)セミナ 


 今回のアナログ技術トレンドセミナは、脱炭素社会の実現に向けて話題となっている「地熱発電」がテーマです。石炭、石油、天然ガス、ウランなど、日本はエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っています。その資源の乏しい日本にも、地中深くには大きな可能性が眠っていて、地熱発電は資源から発電設備に至るまで「純国産」エネルギーです。しかも、その地熱資源量は米国、インドネシアに次ぐ3番目の大きさです。政府が大量導入を進める再生可能エネルギーの一つで、2030年度の温室効果ガスの排出量46%削減(13年度比)に向けて、全国に60カ所以上ある地熱発電を倍増させる方針を明らかにしました。今回のセミナでは、今大きな注目を集めている地熱発電の最前線でご活躍されている3名の講師に現状と動向、今後の展望について臨場感溢れるお話をして頂きました。


 以下、講演の概要をまとめます。


◆講演:「我が国の地熱発電の現状と課題」
     有木 和春 氏(日本地熱協会 会長/
                三菱マテリアル株式会社 エネルギー事業部 副事業部長)
 地熱発電は地下に存在する高温・高圧の水が地上まで上昇して沸騰して蒸気となり、この蒸気でタービンの羽を回転させ、直結された発電機で電気を起こすのが原理。地下からの水を直接利用するのがフラッシュ発電、地下からの熱水で二次媒体を蒸気化してその蒸気を利用するのがバイナリー発電である。メリットは、CO2排出量がほぼゼロ環境適合性に優れる、昼夜・季節変動しない安定電源、日本は世界第3位の地熱資源を有するなどがあげられる。一方課題としては、地熱資源を確認するには調査・評価のプロセスが必要でリスクが高く開発リードタイムも長い、熱水の生産と供給のバランスが取れなくなると圧力や温度の低下が起こる場合がある、スケールなどの不純物の付着が問題となる、地熱資源の約8割が国立公園内や温泉地に賦存している、発電コストの低減が必要である、などが挙げられる。
 脱炭素化社会構築に地熱発電の導入拡大が期待されているが、その進捗は必ずしも捗々しくない。開発リードタイムの短い小・中規模案件は先行しているが、大規模案件は調査途上あるいは本格的調査未着手である。今後大規模案件を加速させること、および引き続き秩序ある地熱開発を行うとともに、更なる事業者の努力と施策が必要である。



◆講演:「富士電機の地熱発電に対する取り組み」
     井岡 高史 氏(富士電機株式会社 
                 発電プラント事業本部 営業統括部 海外地熱部 部長)
 富士電機は1960年に箱根小涌園にて30kW の地熱タービンの運転を開始した。以降、主に海外にて地熱タービンの開発を行っている。これまでに世界で86ユニット、計3,647MWを開発している。
 地熱発電は、地下水がマグマ溜りによって加熱された高温・高圧の蒸気もしくは熱水を、タービンの動力として利用し発電を行う。地熱貯留層の3要素は熱、水、亀裂で、地熱貯留層に井戸を掘り地熱流体をとりだすため、井戸の近傍に発電所を建設する、開発には多くの時間を必要とし、また地熱貯留層を探し当てるためには、高度な技術が求められ、期待した蒸気や熱水を確実に得ることができるとは限らない、といった点も課題となる。さらに、蒸気中の不純物、非凝縮性ガス、湿り蒸気などの地熱蒸気タービンの課題が示され、それらに対する富士電機のソリューションの紹介があった。納入事例として、1:Nga Awa Purua (ニュージーランド、タウポ)、定格出力:140MW、営業運転開始:2010年4月、2:Theistareykir (アイスランド、フサビック)、定格出力:2x45MW、営業運転開始:2017年12月、3:Muara Laboh (インドネシア、スマトラ島)、定格出力:85.26MW、営業運転開始:2019年12月が写真等を交えて紹介された。
 バイナリー発電は温泉熱水、蒸気などの低熱源を有効利用する中小容量地熱発電装置として導入が推進されていて、熱源により低沸点の2次媒体(例えばペンタン)を蒸発させ、その蒸気でタービンを駆動し発電するシステム。富士電機では霧島国際ホテルにて温泉熱源を利用したNEDO支援事業の実証試験を終了し、2017年に初号機(滝上バイナリー発電所)を運転開始し、実用化に踏み切った。納入事例(熱水利用)として、1:滝上バイナリー(大分県九重町)、定格出力:5.05MW、商業運転開始:2017年3月、2:山川バイナリー(鹿児島県指宿)、定格出力:4.99
MW、商業運転開始:2018年2月が写真等を交えて紹介された。


◆講演:「地熱発電事業の現状と今後の動向」
     押切 司 氏 (住友商事パワー&モビリティ株式会社 
                            電力プロジェクト第二部 部長)
 住友商事パワー&モビリティ株式(Sumitomo Corporation Power & Mobility Co., Ltd.)(以下、SCPM社)では、地熱発電事業を案件受注から契約履行、完工、保証期間対応までワンストップで取り組んで、2005年のインドネシアでの初受注を皮切りに、インドネシア、ニュージーランドを中心に15件の地熱案件受注実績がある。
世界の地熱発電設備容量が右肩上がりで増加している中で、世界で3番目の地熱資源量を有する日本の発電量の量はほぼ横ばいで、世界で10番目の量でしかない。1990年代以降、開発は停滞している。その理由は、経済性、開発リスク、地元温泉事業者との調整(殆どの有望地熱開発地域が温泉地域付近に存在。温泉への影響を懸念する温泉事業者等との調整により開発が停滞)、自然公園法等の関係法令の諸規制(有望地熱開発地域が自然公園地域内に賦存)等である。国の地熱発電促進への取り組みとして、民間の地熱調査・開発への助成措置、国立・国定公園の開発の規制緩和、固定価格買取制度(FIT)などを行っている。
 SCPM社の海外での取り組みとして、インドネシア、トルコ、ニュージーランドの地熱発電事情、開発課題などの紹介があった。特に、インドネシアのムアララボ地熱開発現場のドローンによる上空からの撮影動画が紹介された。
 クリーンエネルギー、純国産エネルギー、安定供給可能などで地熱への期待は高い。一方、開発期間が長く、発電コストも高いなどの課題も多い。地熱発電拡大・促進のためには開発期間短縮と開発コスト減をいかに達成するかがカギ(政府によるサポート体制等)になる。

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