◆セミナー報告　≫第71回セミナー

第71回　アナログ技術トレンドセミナ（HAB研セミナ）報告
□テーマ：「世界を変えそうな技術ベンチャー５」 □日　時： 令和5年7月12日（水）14：00～17：00 □形　式： Wｅｂ(Ｚｏｏｍ) 　今年度、第1回目のアナログ技術トレンドセミナは、昨年度に引き続き、我国の注目すべき技術ベンチャーの紹介をテーマとしてとりあげた。HAB研究会 技術ベンチャー委員会委員のネットワークの中から、持続可能な社会づくりに向けて独自の技術開発で社会課題解決への貢献を目指すユニークなベンチャー企業3社からご講演頂いた。 　参加者は23 名で、事業連携の可能性について、活発な質疑が交わされた。
◆講演：「世界初有機半導体レーザー実用化への取組み」 　　　　　 巴山　孝男　氏（株式会社KOALA Tech　COO） 　　　　　https://koalatech.co.jp/JP
KOALA Techは、九州大学 最先端有機光エレクトロニクス研究センターで、世界に先駆けて実現された有機半導体レーザーダイオード（OSLD）のレーザー技術の実用化を目指して設立された九大発ベンチャー企業である。OSLDをレーザー光源として実用化し、近年高精細・フレキシブルディスプレイとして注目される有機EL素子（OLED）をはじめ、有機電子デバイスプラットフォームに高い互換性をもつレーザー光源について解説された。無機半導体によるレーザーには材料や基板に起因する制約がある一方で、KOALA Techが開発するOSLDは、有機材料の特長である分子レベルの設計、有機デバイスの柔軟な製造方法を活かしている事を説明された。 　現時点では、2026年頃に本格的な事業化を目指されており、XRデバイスやウェアラブルデバイスの普及に向けた小型化・軽量化の取り組みは世界で注目度が高く、OSLDをセンシング光源、ディスプレイ光源の新しいソリューションとして、開発を進め有機半導体デバイス分野におけるユーザーへ新しいソリューションを提供して行かれることをご説明頂いた。
◆講演：「高周波駆動超音波による霧化分離装置を用いた濃縮分離」 　　　　　松浦　一雄　氏（ナノミストテクノロジーズ株式会社　代表取締役社長） 　　　　　http://www.nanomisttechnologies.com/
ナノミストテクノロジーズは、独自開発の『霧化分離?システム』を様々な産業分野に応用することを目的とし、2002年10月に設立された。「溶液を分離精製する」工程は、酒や香料の製造、食品・飲料の濃縮からはじまって、石油精製、化学製品の製造、工場内では廃液のリサイクルや汚水の減容処理、海水の淡水化まで多岐にわたるプロセスに導入されている。『霧化分離?システム』は、有機・無機を問わず「非加熱」「非加減圧」で分離精製を行うことができる特徴を有しており、新たな基盤技術として“世界のモノづくりの高度化と省エネ化”に寄与することを目指し、様々な業界の製品導入に取り組んでいる事を説明頂いた。 　SDGsやESG配慮が求められる中、環境配慮、低炭素配慮が会社方針として掲げられ、該社の技術の注目度は高まっていると思われる。
◆講演：「リユースＬＩＢ活用の取り組み（コンバートＥＶ＆オフグリッドシステム）」 　　　　　王本　智久　氏（株式会社アプデエナジー　代表取締役社長） 　　　　　https://www.upd.energy
アプデエナジーはコンバートEV、オフグリッド、EV用バッテリーのカスケードリユースで日本のエネルギー構造改革を目指す会社である。一般的にEV（電気自動車）は環境に良いとされるが、バッテリー製造時にCO2が出るなどの課題がある。アプデエナジーはそんな課題と向き合うべく、廃車となるいわゆる中古のEVのバッテリーを他のカタチで再利用する事業をすすめている。 　そのひとつがエンジン車をEV化する取り組み、そして自動販売機を独立電源で動かすオフグリット化でありそれぞれに関して説明頂いた。EVに積まれている使用済みの複数の高品質リチウムイオンバッテリーを回収・検査し、劣化状態に応じて仕分けをし、最も劣化率の低いバッテリーは、中古のエンジン車からエンジンを取り除いて置き換え、中古EVに生まれ変わらせる。もう少し劣化が進んだバッテリーは、自動販売機の独立電源に、さらに劣化の進み具合に応じて「家庭・オフィスの蓄電システム→ポータブル電池→カメラのバッテリー」と用途を変えている。 　バッテリーの扱いには危険が伴うが遠隔監視システムも備え、細かな整備からバッテリーテストまで全てをメンバー自身の手で実施できることが他社にはない強みである。

このぺージを閉じる