高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第73回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告
     


□ テーマ:「日台連携;世界を変えそうな台湾技術ベンチャー3」
□ 日 時: 令和5年12月12日(火)14:00~17:00
□ 形 式: Webセミナ(Zoom)


 HAB研はここ数年台湾ベンチャー企業との戦略的パートナーシップの可能性を探るために台湾のITRIなどの機関と連携し、台湾スタートアップ・エコシステムや有力技術ベンチャーを紹介するセミナを開催してきました。その第三弾となる今回のセミナも、語意音声AIや声紋認証AIといった技術で台北スマートシティ展2年連続最優秀賞を受賞し台湾で株コードを取得した初のAI関連会社であるUbestreams社創業者の蘇育民博士や、モーションチップ技術でCES2022において注目を浴びたSounds Great社マネージャーの呉茂盛氏、ITRIのシニアプロジェクトマネージャーの林子傑博士をお招きしてご講演をしていただきました。Ubestreams社及びSounds Great社にはそれぞれの技術や製品の特徴、ビジネスモデル等、ITRIにスタートアップ企業への支援プログラムと育成仕組み、日本企業との連携可能性等を紹介していただきました。


◆講演:「タッチフリー・ハンズフリーのデータスマート世界の実現:
      音声AIaaSクラウド・組込みエッジAI及びチップ」
      蘇育民博士(環球睿視股?有限公司 Ubestream Inc.創業者兼CEO)
 本講演は、Ubestream社の自社開発のAI関連技術がほかの企業に対する差別化競争優位やビジネスモデルを説明しました。Ubestream社は自然言語、音声識別、音声生成、話者識別などをコア技術とし、最新のAI開発段階である音声AIと自然言語AIを結合する賢いエンジンを開発することは最大の特徴となります。製品には、AIaaSクラウドブレイン、エッジAI(ネット)、5G AIoT、組み込みAIチップ4つのカテゴリーがあり、従来のAI技術に対し言語AI 、声紋認証(voice ID)、機械学習・ディープラーニングの二刀流で競争優位を持っています。技術とビジネスモデルはクラウド、エッジ、チップの3つの層に分け、具体的にクラウドAIを通じてAIから直接カスタマーサービスを提供し、エッジにおいてはAIロボットやスマートカーの操作を目指し、AIチップの場合はOSの有無と関係なく、AIをウエラブル装置などの小型商品に組み込めます。現在すでに商品化されたAlspeakinクラウドプラットフォームは字幕の自動生成、会議会話記録などの自動転写、日本語のマルチ言語対応を含めて90%以上の正確率を達しています。そのほか、AIアバター有・無しの場合のサービスカウンター、マルチ言語混在の場合の話者・音声識別、バーチャルAI警備員、入国審査時のディスプレイによるリアルタイム双方向会話、ドライブスルーなどの応用シーンの紹介を通じて、同社の技術が人手不足、個人情報保護などの問題を解決する可能性を見せていただきました。質疑応答では、日本とのアライアンスや日本進出計画、技術のロードマップなどの質問に対し、2024年に東京にオフィスを設立するという回答があった。
(注)Ubestream Inc.<https://ubestream.com>
◆講演:「Sounds Great’s Motion Chip 伝統電子製品を半導体で変える」
     呉茂盛氏(聖德斯貴股?有限公司 Sound Great. Co. Ltd.マネージャー) 

 本講演は、Sound Great社のモーションチップの技術優位性を踏まえて、イヤホンやスピーカーといった従来の電子製品に如何にイノベーションをもたらすかを説明しました。Sounds Great社は2019年に設立した半導体チップやタップティックを研究開発するスタートアップ企業です。同社はモーションチープをICコイルの代わりに振動ソースとしてスピーカーへの搭載に注力しています。モーションチップはスマートウォッチやタップティックエンジン、ノートパソコンに使われる場合、いずれも従来のコイル式チップより体積が縮小しdBやパワーが向上するという優位性を示しています。例えば、スマホのスピーカーへリプレイスする場合、許容パワーは1W増、スピーカー体積47 %減、スマホ本体も0.5 mm以上薄型化できるという。製品開発に関しては、イヤホン・補聴器の場合、すでに開発が完了し量産体制の確立を最優先事項にするのに対し、スマホ・ノートパソコンに使用されるモーションチップは現在小型化を最優先の開發目標としています。同社はデザインハウスという位置づけですが、モーションチップ、スーパーエンジン、モジュールの全体設計を行いながら、モーションチップをファウンドリーメーカーにスピーカーなどの製品をシステムメーカーに生産を委託するビジネスモデルを展開しています。
 質疑応答では、モーションチップの駆動原理、販売先・投資状況の予定などの質問があった。
(注)Sound Great. Co. Ltd.<https://sgem1.com/>
◆講演:「ITRI紹介2023」
     林子傑博士(工業技術研究院シニアプロジェクトマネージャー)
 本講演では、ITRIの2030年までの技術戦略とロードマップに合わせて、台湾と海外のスタートアップ企業を支援するプログラムや具体的な支援体制について成功事例を交えながら説明しました。ITRIの支援プログラムとして、主にスマートAIOT、ヘルスケア、グリーンテック、スペーステックといった重点分野の育成をバックアップするTAcc+(Taiwan Accelerator Plus)とTripleがあります。TAcc+・Tripleともに政府の助成金で運営されていますが、TAcc+は海外スタートアップを台湾に誘致し台湾企業との連携を促進するアクセレーターです。一方、TripleはTAcc+などのプログラムをサポートする、海外スタートアップ企業を国内の設計・製造サプライチェーンとつなげるプラットフォームです。このプラットフォームにはITRIの支援のリソースとしてFoxconn、Wistron、ASUSといった台湾大手・中小企業を含む560社以上のサプライチェーン、スタートアップ企業(医療、ICT)、台湾主要インキュベーションセンター、海外インキュベーションセンター台湾支部、医療資源、政府関連部門、技術開発志向企業・機関、国際連携機構、台湾のスタートアップ・エコシステムなどを動員できます。また、支援の中身もスタートアップ企業のニーズに合わせて設計・製品化・生産などの段階別サービスをオーダーメイドできます。育成に成功したシンガポールの環境分野スタートアップ企業の事例を踏まえながら、来年度TAcc+プログラムは来年日本のスペーステック分野に向けて公募するという案内もありました。
(注)TAcc+ “International Program”<https://taccplus.com/en/international-program/>

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